[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック




Record #03-1 -- oxford record -- [ PREV ] [ NEXT ]




Record Details


くるり 学(まなぶ)の 牛津録
Record #: 03-1

Title: 「ジョン・マッキンジーの晩餐」(一)

Issued on: 2001年1月8日
Last modified: 2001年1月8日

メルマガで発行したモノを、加筆修正して、随時ここにアップしていきます。



your picture here
◎編集後記&あいさつ

◎新年の御挨拶

 どうも、あけましておめでとうございます。
 発行人のくるり学(まなぶ)です。
 皆さん、クリスマス、正月はいかがお過ごしだったでしょう。僕はというと……秘密です。っていうか、スーパーとか休みになるから、大量に買い込んだり、風邪を引いてずっと一人寝込んでたりとか、そんな所なんですが……。知り合いもほぼ皆、国に帰っちゃうしで。残り組でターキー焼いたりはしました:-> とにかく、今年もメルマガともども宜しくお願いしますm(_ _)m

◎そして後記(長め)

 新年第一号は、お待たせ第三録です。励ましのメール、ありがとうございました。読者数も固まったまま、発行しなきゃいけないプレッシャーをヒシヒシと感じたりしてます。
 さて、今回のお話、いかがだったでしょうか。本当は、この後に続くお話を書きたくて、始めたんですが、当初の予定と大幅にずれて、またまた三分割で発行することになりそうです。いやはや。

 無理やり書こうとする ⇒ 内容が広がってしまう ⇒ 長くなる

という循環。一応、無関係なことはなるべく書かないよう、努めてるんですが……。長いと思った方は、苦情下さい。いいきっかけになって、短くなるかも知れません。
 ということで、次号以降に登場する後半のお話も、楽しみにお待ち下さい。

 ホームページを更新しました。リニューアルではなくてただの更新です。
 日本から結構アクセスできないという話を頂いたので、日本のライコスの方にミラーサイトを設置しましたので合わせてよろしくお願いします。掲示板も早く付けないとね。アドレスは、
 http://members.tripod.co.jp/kururi_m/
 http://kururi_m.tripod.co.jp/
です。実は、kururi@lycos.co.uk のメールも日本語が文字化けしてたり、直接日本語打てなかったり、読みにくかったりしてます。容量が大きいのと、場所、メーラーの都合上選んだんですが、日本のライコス・メールのベータ・テストが終わり次第乗り換えようかと思ってます。今しばらくはこのまま静観。「サイトにこんなコーナーがほしい」等の要望も受け付けてます。読者数の割にぜんぜんアクセスがないんですよね。(明らかにサイトが駄目ってことじゃ……)

 次号、第三録の二は、「ジョン・マッキンジーの晩餐」(二)です。

 メールで質問など送って下されば、文章の中でちょこちょこ応えていこうと思ってますので、皆さんどしどしメール下さい。個別に返信できる自信は余りないです(汗)。
by Kururi
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      !!無断転載厳禁!!     
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行者名:くるり 学 (kururi@lycos.co.uk)
マガジン名:英国留学 牛津録
発行周期:ほぼ隔週刊(不定期って申請したのに)
発行人サイト:http://members.tripod.co.uk/kururi/
       http://members.tripod.co.jp/kururi_m/
(C)M.Kururi, 2001-2002. All rights reserved.
このメールマガジンは『まぐまぐ』と『melma!』で発行しています。
(まぐまぐマガジンID: 0000080277)(melma!マガジンID: m00055251)





SIDENOTES

 ※……『サーヴ serve=給仕する』から、外来語化しました。給仕する行     為。決してトス・アタック等に繋ぐ物ではありません。


 ※1…伝説では、彼女の亡骸は、天使によって運ばれたことになっている。


 註:シエーナのキャサリンも、イタリア語なので「カテリーナ」と呼ばれるが、便宜上ここでは「キャサリン」で統一。





Body

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■DOMI|MINA■  くるり学 の                ■■■■
■ NVS|TIO ■          牛津録           ■■■■
■ILLV|MEA ■        oxford  record         ■■■■
■ |VVV| ■                第三録の一   ■■■■
■■■■■■■************************■■■■

●第三録「ジョン・マッキンジーの晩餐」(一)

1 脂滴るホールへ

  ある日、カレッジのメールボックスに見慣れた一通の手紙が入っていた。
 小さな封筒を開けると、中には次のような一枚の招待状が隠されている。


  ──────────────────────────────┓
                                ┃
           聖キャサリンの日 2001        ┃
                                ┃
                                ┃
         ○○カレッジの校長、フェロー一同は      ┃
          2001年11月25日、日曜日       ┃
              晩餐会に於いて           ┃
                                ┃
              くるり 学 氏           ┃
                                ┃
          に同伴して頂くことを希望します       ┃
                                ┃
                                ┃
   7:15−7:45pm            返信希望  ┃
   マッキンジー・ルームにて          カレッジ秘書 ┃
                                ┃
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


  いつもの様に唐突に、カレッジのお偉いさんからお呼びが掛かったよう
 だ。
  あいつらはいつもそうだ。気紛れに手紙を寄越しては、ほれ○×パーテ
 ィがあるから来いだの、△□ミーティングがあるから来いだの、折角軌道
 に乗りかけた生活リズムに水を指してくる。ひょっとして、校長の近く、
 大層ご立派なハイ・テーブルに座らせられて、
 「ところで、最近、君の研究の進渉度合いはどうかね」と小難しい英語で、
 しかも、勿体ぶって聞かれたりなんかしたらどうしよう。
 「ところで、最近、君のトサカの具合はどうかな。ワシのは湿ってる」な
 んて言われたら、かなり愉快なのだけど。……前言撤回、どっちも厭。
  なんて思いながら、旨そうなディナーへの欲求を抑える事が出来ず、ア
 ッサリ快諾。あんまりにもアッサリ決めてしまったもんだから、返信を出
 してしまった後ころりと忘れてしまい、気が付いたら、もう当日の七時十
 五分を過ぎた所だった。慌ててしっくり来ない黒スーツに着替え、すんで
 の所で、僕はカレッジへと滑り込んだ。
 
  滑り込んだ後で思い出した。そう言えば、マッキンジー・ルームが何処
 にあるか知らなかったんだ。
  幸いカレッジに入ってすぐの所、何やら人が集まっているのが見えた。
 飛び込んでみると、意外と疎らにしか人が居なくて、既にワインやスコッ
 チを片手に談笑している。部屋に入ってすぐの所に、美味しそうなミン
 ス・パイが置いてあったので構わず頂いていたら、つい最近知り合ったば
 かりの友人に出くわした。随分遅れて来てしまったから、心配してたんだ
 けど、間に合ってよかった、と軽く挨拶を交わしほっとすると、お腹が急
 に減ってきて、夕食はまだなのかな、とその友人にこっそり呟いた。する
 と、
 「今日は、ホールは開いてないんだよ」
  何を言っているのだ明智君。と、戸惑いながらも尋ね返すと、
 「だって、ホールの前に、『今日はディナーはサービスしてません』って
 貼ってあったんだもん」そんな気球な。じゃなくて危急な変更なんて……。  
 
  内緒で悲嘆に明け暮れながら、とぼとぼと、新しい酒を手に取る。もう
 こうなったら、そこら辺をサーヴ()している若いお姉さん給仕に愚痴
 るしか道はない。言っておくが、決して口説いてる訳ではない。
 「あのさ、お姉さん。折角今日、ウキウキしながらこんなとこまで、こん
 な、(英語では素敵という)恥かしい格好で出てきたのに、ディナーが無
 いって言うんだよ。信じられる?」
  ほとんどオヤジ・モード炸裂なのは、この際気にしてはいけない。お姉
 さんは――お姉さんと言うのは、いつでも慣れてるもんだが――慣れた感
 じでアッサリ、「そうよ。今日は元々ディナーが無い日よ」それでも諦め
 ない僕は、
 「でも、今日の聖キャサリン晩餐会は、招待状も貰ったんだよ」
 「あら、聖キャサリン晩餐会は、こっちじゃなくて、あっちの部屋よ。も
 うホールに向かってる頃じゃないかしら」 
 
  一瞬の空白。目だけ二七〇度ほど回転。 
 
 「あはは、あはははは」笑って誤魔化しながら、百万ポンドの笑顔を貰い、
 僕はホールへとひた走った。目の前には、先程のアッサリした会話とは対
 照的な、脂滴る空想メニューがお花畑と共に広がっていった。 
 
 
2 聖キャサリン

  四世紀のエジプト。地中海の巨大な楽園、アレクサンドリアには、一人
 のヘンテコな女の子が居た。何やら高貴な出自らしく、ローマ帝国の影響
 を大きく受けたこの港町で、クリスチャンとして何不自由なく育った。お
 陰で、彼女が「私はキリストの花嫁なの」と言いふらしても、真直ぐな彼
 女の物言いに、わざわざ諭すものは居ない。
  美しく育った娘は、やがて、名を持つ男を魅了してしまう。名前はこの
 際、重要ではない。重要なのは、彼が一国の主だったという事実であった。
 彼は娘に求婚して言う。 
 
 「朕の妃にならぬでおじゃるか」娘は躊躇無く応えて言う。 
 「愚は既に救世主の妃でありおりはべり、いまそかり。今更、あなた様に
 仕えよう筈もありませぬ」困った彼は、彼女に次々と賢人を送りつけ、何
 とか説得しようと試みた。賢人は問う。 
 「そもさん」彼女は空かさず応える。「せっぱ」 
 「象さんとキティちゃんを結婚させるにはどうすればよ〜いか?」
 「負けても結婚はしませんよ。第一キティちゃんは私の物です」
 「……負けた」
 
  こうして五十の賢人はアッサリ跳ね返されてしまった。
  それでも諦め切れない皇帝は、彼女に構わず契りを迫る。 
 
 「朕の嫁に来ないかと言うておるのじゃ」彼は続けて、
 「ヨットも買ってあげるし、グッチもプラダもイッセイ・尾形も買ってあ
 げるよ。美しく着飾った君と一緒に大洋に出たいんだ。そして『ぼかぁ、
 幸せだなぁ』って……」女は怒って、「何言ってんだ、この蛆虫野郎が! 
 俺はキリストとバンバンやりまくるっつってるだろが」
  以降、誹謗・中傷が飛び交うのでネチケットに従い削除。
 
  結局、彼は、権力の名の下、彼女を捕らえ、投獄してしまう。そうして
 町中で晒し者にした挙句、太くて重たい車輪による、聞くも無残な拷問を
 与え、最後はその車輪で首をくびり落とされ、彼女は遂に絶命した。人知
 れず、首の無くなった遺体はシナイ山麓に埋められ、名も無い人々によっ
 て供養されたのだと言う。彼女の名は、カテリーナと言う。(※1)
 
 
  彼女は永らく歴史の舞台から姿を消し、次に彼女の名前が登場して来た
 のは、中世封建社会の時代であった。
  一三七四年生まれのキャサリンは、南部ヨーロッパの町、シエーナに降
 臨した。早くに母を失った彼女は、年の少し離れた姉に育てて貰い、敬虔
 なキリスト教徒として活発な半生を送る。彼女がまだ年若い少女の頃、病
 を元に、乳母役であった彼女の姉が死んでしまい、それを契機に修道院の
 扉を叩くこととなる。熱心な信者となった彼女は、様々な奉仕活動と、そ
 の鬼気迫る苦行の数々から、シエーナの聖キャサリンとして認知されるよ
 うになった。苦行といっても、想像するのと実行するのでは大違いだ。ま
 して、民衆の信仰を集めるほどの苦行と言うのは並大抵ではなかったと推
 測される。禁欲は勿論のこと、不眠、祈り、瞑想、摂食を含む断食、果て
 は、自発嘔吐や鞭打ち、針のむしろで寝る過酷な苦行まで。結局無理が祟
 って三十二歳でこの世を去った彼女の影響は、小さからぬ物だったようだ。
 彼女の行ったような摂食のことを、聖なる拒食と呼び、多くの追従者を生
 んだらしい。
  生まれ変わりと言えば話は早いのだろうか。
  このキャサリンと、アレクサンドリアのカテリーナ信仰が結び付き、シ
 エーナのキャサリンに関する伝記は、数々の奇跡で埋め尽くされた。同時
 に、魔女と魔法の時代であった中世において、キャサリン所縁の祭日と儀
 式がさまざまなほうほうで形式化され、今日に形を残しているのが聖キャ
 サリンの日である。またの名をキャサーニングと言う。 
 
 
  カテリーナに話を戻してみよう。
  シナイ山の麓で遺体が発見されたのは、あれから随分経ってからのこと
 だと言う。現在、そこには、活動中では世界最古の聖キャサリン修道院が
 居を構え、ローマに次ぐ蔵書を抱えた一大聖地となっている。
 
  要約すると、聖キャサリンの日というのは、キリスト教(特にローマ・
 カトリック教会派)が中世に設けた聖人を祭る晴れやかなる日なのだった。
 決して偉い人が気難しい話をする為の日じゃないのだ。この国では、妙な
 勘ぐりはあまり意味を成さない。
 
 
 (話は後半につづく)

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■




LINKS